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研究発表

 

  平成25年に第28回保団体連医療研究集会で発表しました。

 

 

 GPのための金属アレルギー治療

 

【はじめに】

 近年、金属アレルギーの患者が増えており、皮膚科などでパッチテストを受けて一般の歯科
診療所を受診することも珍しいことではなくなった。歯科診療所では、パッチテストの結果を受
けて歯科治療を進めていくのだが、その前に口腔内の金属を分析しなければならない。何故ならば、アレルゲン金属が含まれた補綴修復物の特定がなければ、どの金属を選択的に除去したらよいか分からないからだ。

その際、特にアマルガム、ニッケルクロム合金の鑑別が重要視される。アマルガムは、他の金属と接触するとガルバニー電流が流れ、イオン化しやすい。そのため、金属アレルギーの原因となりやすい。アマルガムに水銀が含まれているため、水銀中毒を懸念する方もいるが、銀合金との合金(アマルガム)として口腔内に存在するのでその心配はない。

また、ニッケルクロム合金は、貴金属と比べて化学的に不安定で、イオン化しやすい。そのため、金属アレルギーの原因となりやすい。

【金属アレルギー専門外来の対応】

 大学付属病院の金属アレルギー専門外来では、エネルギー分散型エックス線マイクロアナライザー(EPMA)および蛍光エックス線分析装置(XRFS)を用いて、口腔内のインレー、クラウン・ブリッジ、義歯の表面を軽く削り、その粉末(0.1r)を採取して試料として分析を行なっている。以下、その手順を説明する。

@   まず、口腔内の金属補綴修復物の数だけ、器材を準備する(図1)。いずれも、金属に汚染されていないものを使用する。

 研磨用シリコンポイント、タングステンカーバイドバー(ラウンドタイプ)、綿棒、チャック付きビニール袋(以上を、分析数用意する)。ダッペングラス、蒸留水。

図1 必要な器材

図2 補綴修復物表面の研磨

A   金属の採取部位をシリコンポイントで軽く研磨して、プラークや沈着している多種金属を除去する(図2)。

B   タングステンカーバイドバーをごく低速で回転させて圧力を加えないように軽く当て、金属を削り取る(図3)。

  図3 試料を採取

C   採取した試料は、個別に被験者氏名・部位・補綴修復法・採取日などを記入して、被験者のアレルギーデータとともに分析センターに郵送する(図4)。

  図4 採取した試料

D   2週間程度で、分析センターから分析結果が郵送されてくる。

【保険制度の矛盾】

 医学的に正しいのは、大学付属病院の金属アレルギー専門外来が行なっている金属の分析方法だと思う。しかし、上記のような検査方法は、保険診療では認められていない。混合診療が認められていない現状では、口腔内の金属分析が自費となるので、その後の治療も自費扱いとなってしまい、高額な診療費が必要となる。アマルガムやニッケルクロム合金を金銀パラジウム合金や銀合金に置き換えて済む場合、すべて保険診療の範囲内でできなければおかしいのではないか。

 そこで、現状の保険制度下でもできる現実的な対応、保険診療の初・再診料の範囲で行なえる費用と手間のかからない簡便法が求められる次第である。

【簡便法】

  図5 アマルガム充填

 現在、行なっている簡便法を紹介する。

@   視診により、金合金、アマルガムとその他の金属を鑑別する。その際、アマルガム充填とイ
ンレーの鑑別に注意する(図5〜6)

  図6 インレー

A   金合金、アマルガム以外の金属に、DMGスポットテストを行なう。DMGスポットテストは、1%DMGアルコールと10%アンモニア水を2〜3滴ずつ垂らした後、表面を綿棒でこすって行なう。ニッケルが溶出していれば、綿棒の先がピンク色になる。DMGスポットテストでニッケルが検出されたならば、ニッケルクロム合金、陶材焼付用合金(ノンプレシャス)と判断する。

B   視診により、「補綴修復物がある歯が乳歯か永久歯か」、「補綴修復物の種類がメタルコアでないか」、「補綴修復物の種類がメタルボンドポーセレンか硬質レジン前装冠か」を診査する。

C   永久歯で、メタルコア以外の補綴修復物(メタルボンドポーセレンを除く)で金合金、アマルガム、ニッケルクロム合金、陶材焼付用合金(ノンプレシャス)以外の金属は、金銀パラジウム合金と判断する。

D   永久歯にあるメタルボンドポーセレンで陶材焼付用合金(ノンプレシャス)以外の金属は、陶材焼付用合金(プレシャス)と判断する。

E   永久歯にあるメタルコアは、銀合金と判断する。ただし、稀ではあるが、後続永久歯がない場合、乳歯にも銀合金のメタルコアが使用されることもある。

F   乳歯の補綴修復物で、金合金、アマルガム、ニッケルクロム合金、焼付用合金(ノンプレシャス)以外の金属は、銀合金と判断する。ただし、稀ではあるが、後続永久歯がない場合、金銀パラジウム合金が使用されることもある。

【終りに】CWD /docs/img/shinbi

 以上の簡便法により、口腔内の金属の分析が保険診療においても可能になった。それに伴い、金属アレルギー患者の治療計画の立案が適正に行えるようになった。それに伴い、アマルガムやニッケルクロム合金を金銀パラジウム合金や銀合金に置き換えれば済むようなケースは、保険の範囲で治療が行なえるようになった。

 しかし、複数の金属に対してアレルギー反応を示す患者も少なくない。その場合、口腔内の金属を除去してメタルレスの状態にするのだが、補綴修復物が保険外のセラミックになり、診療費も高額になる。そこで、金属アレルギーの患者を対象にした審美性に拘らないオールセラミックスクラウンを安価に提供することが必要になる。また、金属冠、メタルインレーと比較して、オールセラミックスクラウン、セラミックインレーは破損のリスクがあるので、患者に安心感を与えるために5年程度の保証も必要だと思う。当院としては、それらの取り組みを既に始めている。

 最後に、上記の簡便法によって口腔内の金属の分析をパッチテストの前に行なうことによって、パッチテストの対象金属を絞り込むことができるようになった。それに伴い、パッチテストによる感作のリスクが減らされるのではないかと期待している。

【文献】

@   「GPのための金属アレルギーの臨床」(井上昌幸監修)デンタルダイヤモンド社 東京 2007年

A   「口の中に潜む恐怖 アマルガム水銀中毒からの生還」(ダニー・スタインバーグ著)マキノ出版 東京 2004年

 

自費治療