「音楽フェスに潜む外傷歯の危険性」    

<掲載誌>

      デンタルダイヤモンド2016年12月号読者サロン(200ページ)

<掲載内容>

1 音楽フェスは歯に危険?
このように言われても、読者の先生方はすぐにピンと来ないと思う。ロックのライブでは、観客がモッシュやダイブ、クラウドサーフを始め、全身を使って暴れるのは珍しいことではない。筆者自身もロック好きなので、その楽しさは理解できる。しかし、歯科医師の立場から言わせてもらうと、それらは、外傷歯のリスク要因となる危険な行為である。
たとえば、モッシュでは、客同士が押し競饅頭状態で揉みくちゃになり、手や肘が他人の顎・顔面に直撃することがある。また、ダイブやクラウドサーフ中に手足をばたつかせると、下で支えている人の顎・顔面に当たる危険性がある。
2 ロックなアイドルの急増
最近では、BABYMETALというアイドルの影響もあり、モッシュやダイブなどがロックフェスだけでなく、アイドルフェスでもアイドルフェスでも行われるようである。BABYMETALは、海外のへビメタファンに指示され、逆輸入的に人気を集めており、モッシュだらけの激しいライブを行っている。

アイドル戦国時代の今日、他のアイドルとの差別化を図るため、ロックをコンセプトにしたアイドルユニットが急増している。いまや、アイドルがロックを歌う時代なのだ。それと同時に、アイドルフェスやライブでモッシュなどの行為が増えるのは自然の成り行きである。
また、そのなかには、ご当地アイドルからの派生ユニットや、地方出身のユニットも多く、モッシュやダイブ、クラウドサーフが地方のアイドルフェスやライブでも見られるようになるのは時間の問題であろう。
3 音楽フェス=地域の文化
筆者は、千葉県で開業している。千葉県では毎年夏になると、幕張でSUMMER SONICという音楽フェスが開催されている。このフェスから、アイドルであるPerfumeやBABYMETALを世界に送り出したことを、千葉県民として誇りに思う。
これからは、音楽フェスを地域の文化として、見守り育てていくことが必要なのではないだろうか。クールジャパンという意味でも、このようなサブカルチャーの祭典は必要だと思われる。そのためにも、音楽フェスやライブ会場での死傷事故を防がなければならない。
以下、歯科医師の立場より、安全対策について検討したい。
4 楽しい時間をすごすために
音楽好きな患者さんや、ライブなどで口腔内に外傷を負った患者さんには、モッシュ時には当たると危険な眼鏡や腕時計、ブレスレットなどを外すことと、マウスピースを装着することを勧める。ラグビーなどの歯を外傷しやすいスポーツに準じた対応が必要である。なお、マウスピースの咬合は、可能ならば15oが望ましい。全身咬合的に診ると、テンプレートと同様の効果が期待できる。また、リフトアップやモッシュ時に姿勢が安定し、転倒のリスクも減るかもしれない。
さらに、ダイブやクラウドサーフ中に手足をばたつかせると、下で支えてくれる人だけでなく、自分にも危害が及ぶことを説明する。下で支えてくれる人がよろめいたり、転倒することで、それだけ転落事故のリスクも高まる。しっかりと支えてもらわなければ転落し、死に至ることさえあるのだ。
安全のためだからと、頭ごなしに「座って大人しく聞きなさい!」と強要されるのは御免である。しかし、せっかくの楽しい時間を台なしにしないよう、怪我には十分気をつけなければならない。

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