● ドライマウスの治療方針
■口腔ケア■
岡永歯科では、すべてのドライマウスに対して、以下のような口腔ケアを共通して行っている。
1. 口腔粘膜の保湿
保湿ジェルを使用して、口腔内を湿潤に保つようにする。

図1 保湿ジェル(バイオエクストラ等)
2. 口腔内の衛生管理
歯石などを除去して口腔内を清潔にする。また、ブラッシング指導などをして口腔内を衛生的に保つようにする。
3. 唾液腺の刺激
安静時唾液量が少なくても、ガムテストである程度の唾液量があるケースでは、唾液腺を刺激して唾液の分泌を促す。キシリトール入りのシュガーレスガムを噛んだり、指で唾液腺マッサージをしたりする。

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図2 耳下腺マッサージ
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図3 顎下腺マッサージ
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■治療■
1. 薬物療法
ドライマウスの原因や症状により、下記のような薬物療法を行う。
シェーグレン症候群によるドライマウスの場合、塩酸セビメリン(サリグレン、エポザック)を投与する。その他のドライマウスの場合、茵陳蒿湯、滋陰降火湯、白虎加人参湯を適宜選択して投与する。
表4 ドライマウスに用いられる健康保険適応薬剤(漢方薬)
薬剤名
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健康保険の適応
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茵陳蒿湯
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口内炎
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滋陰降火湯
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喉にうるおいがなく、痰が出なくて咳き込むもの
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白虎加人参湯
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喉の渇きとほてりがあるもの
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また、シェーグレン症候群や放射線性ドライマウスの場合には人工唾液(サリベート)を、カンジダ症を併発している場合にはフロリードゲルを用いる。
2. ツボ療法
舌痛症などの対症療法として、ツボ療法(低周波治療、レーザー針)などを用いる。
表5 ドライマウス治療に用いられる主なツボ
ツボの名称
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適応症
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足三里
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舌痛 流涎症
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翳風
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唾液腺炎
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金津
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舌乳頭炎
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頬車
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流涎症 唾液腺炎
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玉液
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舌乳頭炎
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曲池
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舌痛症
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合谷
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舌乳頭炎 カンジダ症 流涎症
唾液腺炎
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三陰交
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舌痛症
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地倉
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舌乳頭炎 カンジダ症
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内関
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舌痛症
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■全身的ケア■
岡永歯科では、ドライマウスの原因に対して、以下のような全身的ケアを行っている。
1. 心因性ドライマウス
まず、カウンセリングを目的に、交流分析を行っている。分析結果を踏まえ、カウンセリングを進めていく。そして、必要があれば、リラクゼーションを目的に、催眠療法や自律訓練法も併用する。また、唾液腺マッサージを行う際に、リラクゼーションを目的としてアロマオイルを併用している。
2. 老人性ドライマウス
口腔機能向上プログラムのトレーニングメニューに沿って、口腔リハビリテーションを行う。まず、口腔機能の短期間(2ヶ月程度)での改善を目標として、基礎的トレーニングを行う。咀嚼関連筋、舌などの訓練を中心とした咀嚼能力改善トレーニングとして口腔機能体操を指導する。その後、改善した口腔機能を維持することを目的として、機能的トレーニングを行う。毎日の食事の場を食べる機能改善トレーニングの場と捕らえ、体系的な食事指導を行い、最終的には食べる機能を維持する方法を習慣化する。
3. 脳血管障害性ドライマウス
自主的に口腔機能体操ができるレベルまで改善することを目的に、PNFなどを併用した口腔リハビリテーションを行う。その後、上記の口腔機能向上プログラムのトレーニングメニューに沿って、口腔リハビリテーションを行う。
< 他科との連携 >
岡永歯科では、他科と連携した治療を心掛けている。ドライマウスは、全身的な原因によって起こることが少なくない。そのような場合には、他科と連携して治療を進めていくことが必要となる。
表6 ドライマウス治療と他科との連携
原因
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他科との連携
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シェーグレン症候群
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ドライマウス以外の症状に対する治療依頼
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薬剤性ドライマウス
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服用薬剤の変更を主治医に依頼
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放射線性ドライマウス
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ガン治療に関する診療情報を主治医に確認
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糖尿病性ドライマウス
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糖尿病に関する診療情報を主治医に確認
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脳血管障害性ドライマウス
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リハビリに関する診療情報を主治医に確認
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老人性ドライマウス
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全身の健康状態を主治医などに確認
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心因性ドライマウス
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必要に応じて心療内科などを紹介
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