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ドライマウス(口腔乾燥症)

患者様の質問 

 ドライマウス治療の再検討   
 

岡永 覚(歯科)

● はじめに

最近、「口の中が乾いて夜眠れない」、「口の中が乾いてうまく会話ができない」、「クッキーなど乾いたものが食べられない」などと訴えるドライマウスの患者が増えている。現在、日本には、800万人以上のドライマウス患者がいると言われている。しかし、ドライマウスに対応できる専門医が少なく、多くの患者が苦しんでいる。患者の中には、「ドライマウスは、どうせ良くならないのでしょう」と諦めている者も少なくない。何故、そのようなことが起こるのであろうか。今では、ドライマウスは広く知られるようになり、書籍やセミナーも少なくない。しかし、残念ながら、患者に対して十分な治療が行われていないのが実状である。そこで、今回は、ドライマウス治療の現状について分析し、ドライマウス治療に関する再検討を試みたい。

● ドライマウス治療が普及しない要因

日本では、多くの場合、医療保険制度の下で医療が行われている。したがって、医療の内容は、医療保険制度上のルール(療養担当規則)によって決められている。しかし、現行の医療保険制度がドライマウス治療を想定していないので、医療保険でドライマウス治療を行おうとすると様々な矛盾が生じる。例えば、研究論文やセミナーで推奨されている薬剤のほとんどが、ドライマウスで医療保険の適応を受けていない。現在、適応を受けているのは、塩酸セビメチン(サリグレン、エポザック)とサリベートだけである。それも、シェーグレン症候群や放射線性ドライマウスにしか認められていない。

1 ドライマウス治療に用いられる健康保険適応薬剤(内用薬)

薬剤名

健康保険の適応

サリグレン

シェーグレン症候群

エポザック

シェーグレン症候群

サリベート

シェーグレン症候群
放射線性ドライマウス

また、白虎加人参湯、麦門冬湯、柴苓湯の漢方薬がドライマウス治療に推奨されているが、麦門冬湯、柴苓湯は医療保険の適応を受けていない。  以上のように、ドライマウスに使われる薬剤のほとんどが、ドライマウスで健康保険の適応を受けていない。したがって、医療保険では、シェーグレン症候群や放射線性ドライマウスの診断がないと、口腔粘膜に対する外用薬(アズレン製剤、フロリードゲルなど)の投与、歯石除去やブラッシング指導など予防歯科的なケアくらいしかできない。確かに、ドライマウスの患者は、齲蝕や歯周病のリスクを抱えているが、予防歯科的なケアを望んでいるのではなく、主訴であるドライマウスを治療して欲しいのだ。それなのに、医療保険では、まともに治療してもらえない。対症療法として、保湿剤(医薬部外品)の使用を勧められるだけである。これでは、患者は納得しないであろう。

2 ドライマウス治療に用いられる健康保険適応薬剤(外用薬)

薬剤名

健康保険の適応

アズノール錠

口内炎、歯周病、歯肉炎、舌炎、口内創傷

アズノール・ガーグル顆粒

口内炎、歯周病、歯肉炎、舌炎、口内創傷

含嗽用アズレン「昭和」

口内炎、歯周病、歯肉炎、舌炎、口内創傷

マズレニンG含嗽用散

口内炎、歯周病、歯肉炎、舌炎、口内創傷

含嗽用アズレン「TYK

口内炎、歯周病、歯肉炎、舌炎、口内創傷

含嗽用ハチアズレ

口内炎、歯周病、歯肉炎、舌炎、口内創傷

含嗽用AZ細粒「ヒシヤマ」

口内炎、歯周病、歯肉炎、舌炎、口内創傷

フロリードゲル

口腔カンジダ症

● ドライマウスの診査・診断

岡永歯科では、総合的にドライマウスの治療方針を立てるため、以下のように診査・診断を行っている。

(1)
唾液量検査
安静時唾液量とガムテスト(咀嚼時唾液量)を行っている。これらの検査で、いずれかが正常値を下回った場合、ドライマウスとして診断して治療する。

  3 唾液量検査

名称

安静時唾液量

ガムテスト群

方法

何もしないで測定する

ガムを噛みながら測定する

測定時間

15

10

正常値

1.5cc以上

10ml以上

(2)シェーグレン症候群との鑑別診断
安静時唾液量が正常値を下回り、ドライアイの症状があれば、ヨーロッパ診断基準によりシェーグレン症候群かどうか調べる。
まず、口腔症状について確認する。診断には、下記の症状が1つ以上確認されることが必要である。
1.
 口腔乾燥を3ヶ月以上毎日自覚していること
2.
 成人後に反復するあるいは持続する唾液腺の腫脹を自覚していること
3.
 水気の少ない食物を取るときに、しばしば飲み物を必要とすること


次に、眼症状について確認する。診断には、下記の症状が1つ以上確認されることが必要である。

1.
 3ヶ月以上毎日持続するやっかいな眼球乾燥を自覚していること
2.
 眼に砂あるいはジャリが入ったような感じを繰り返すこと
3.
 点眼液を1日に3回以上使用すること


最後に、シルマーテストで涙液量の検査をする。シルマー試験紙を目尻に付け、5分間測定する。
ヨーロッパ診断基準では、安静時唾液量、涙液量が正常値を下回り、口腔症状、眼症状が確認できれば、シェーグレン症候群と診断される。

(3)
シェーグレン症候群以外のドライマウスの鑑別診断
シェーグレン症候群でないと診断された場合には、他にドライマウスの原因を探さなければならない。
まず、問診から、その原因を探る。現在、服用している薬剤リストを確認し、ドライマウスが副作用によるものかを調べる。もしも疑わしい薬剤が認められたならば、薬剤性ドライマウスと診断して治療する。また、糖尿病や脳卒中などの全身疾患の有無、放射線治療経験の有無についても調べる。もしも該当していれば、糖尿病性ドライマウス、脳血管障害性ドライマウス、放射線性ドライマウスと診断して治療する。
次に、心理テストを行い、メンタル的な要因の有無について調べる。スクリーニングの目的で、MS調査表、自律神経症状調査表、SRQ−Dの3種類のテストを行い、神経症、心身症、自律神経失調症、うつ病について調べる。これらの心理テストの結果が陽性であれば、心因性ドライマウスと診断する。
そして、老人性ドライマウスが疑われる場合、必要に応じて口腔機能について評価する。
@ 半年前に比べて固いものが食べにくくなった
A お茶や汁物などでむせることがある
B 口の渇きが気になる
以上のすべてに該当する場合、反復唾液嚥下テストを行う。嚥下回数が30秒間に3回未満であれば、老人性ドライマウスと診断して治療する。
最後に、口腔内の診査を行う。口腔内の衛生状態、齲蝕や歯周病、カンジダ症の状態について調べ、口腔ケアの計画を立てる。

1.
 半年前に比べて固いものが食べにくくなった
2.
 お茶や汁物などでむせることがある
3.
 口の渇きが気になる


以上のすべてに該当する場合、反復唾液嚥下テストを行う。嚥下回数が30秒間に3回未満であれば、老人性ドライマウスと診断して治療する。
最後に、口腔内の診査を行う。口腔内の衛生状態、齲蝕や歯周病、カンジダ症の状態について調べ、口腔ケアの計画を立てる。

● ドライマウスの治療方針

■口腔ケア■
岡永歯科では、すべてのドライマウスに対して、以下のような口腔ケアを共通して行っている。

1.
 口腔粘膜の保湿
保湿ジェルを使用して、口腔内を湿潤に保つようにする。
  
  図1 保湿ジェル(バイオエクストラ等)

2.
 口腔内の衛生管理
歯石などを除去して口腔内を清潔にする。また、ブラッシング指導などをして口腔内を衛生的に保つようにする。

3.
 唾液腺の刺激
安静時唾液量が少なくても、ガムテストである程度の唾液量があるケースでは、唾液腺を刺激して唾液の分泌を促す。キシリトール入りのシュガーレスガムを噛んだり、指で唾液腺マッサージをしたりする。

2 耳下腺マッサージ

3 顎下腺マッサージ

■治療■

1. 薬物療法
ドライマウスの原因や症状により、下記のような薬物療法を行う。
シェーグレン症候群によるドライマウスの場合、塩酸セビメリン(サリグレン、エポザック)を投与する。その他のドライマウスの場合、茵蒿湯、滋陰降火湯、白虎加人参湯を適宜選択して投与する。

4 ドライマウスに用いられる健康保険適応薬剤(漢方薬)

薬剤名

健康保険の適応

茵陳蒿湯

口内炎

滋陰降火湯

喉にうるおいがなく、痰が出なくて咳き込むもの

白虎加人参湯

喉の渇きとほてりがあるもの

※ 健康保険で認められている漢方薬で効果がない場合には (ここをクリック!

また、シェーグレン症候群や放射線性ドライマウスの場合には人工唾液(サリベート)を、カンジダ症を併発している場合にはフロリードゲルを用いる。

2. ツボ療法
舌痛症などの対症療法として、ツボ療法(低周波治療、レーザー針)などを用いる。
    5 ドライマウス治療に用いられる主なツボ

ツボの名称

適応症

足三里

舌痛 流涎症

翳風

唾液腺炎

金津

舌乳頭炎

頬車

流涎症 唾液腺炎

玉液

舌乳頭炎

曲池

舌痛症

合谷

舌乳頭炎 カンジダ症 流涎症
唾液腺炎

三陰交

舌痛症

地倉

舌乳頭炎 カンジダ症

内関

舌痛症

■全身的ケア■

岡永歯科では、ドライマウスの原因に対して、以下のような全身的ケアを行っている。

1.
 心因性ドライマウス
まず、カウンセリングを目的に、交流分析を行っている。分析結果を踏まえ、カウンセリングを進めていく。そして、必要があれば、リラクゼーションを目的に、催眠療法や自律訓練法も併用する。また、唾液腺マッサージを行う際に、リラクゼーションを目的としてアロマオイルを併用している。

2.
 老人性ドライマウス
口腔機能向上プログラムのトレーニングメニューに沿って、口腔リハビリテーションを行う。まず、口腔機能の短期間(2ヶ月程度)での改善を目標として、基礎的トレーニングを行う。咀嚼関連筋、舌などの訓練を中心とした咀嚼能力改善トレーニングとして口腔機能体操を指導する。その後、改善した口腔機能を維持することを目的として、機能的トレーニングを行う。毎日の食事の場を食べる機能改善トレーニングの場と捕らえ、体系的な食事指導を行い、最終的には食べる機能を維持する方法を習慣化する。

3.
 脳血管障害性ドライマウス
自主的に口腔機能体操ができるレベルまで改善することを目的に、PNFなどを併用した口腔リハビリテーションを行う。その後、上記の口腔機能向上プログラムのトレーニングメニューに沿って、口腔リハビリテーションを行う。

< 他科との連携 >
岡永歯科では、他科と連携した治療を心掛けている。ドライマウスは、全身的な原因によって起こることが少なくない。そのような場合には、他科と連携して治療を進めていくことが必要となる。

6 ドライマウス治療と他科との連携

原因

他科との連携

シェーグレン症候群

ドライマウス以外の症状に対する治療依頼

薬剤性ドライマウス

服用薬剤の変更を主治医に依頼

放射線性ドライマウス

ガン治療に関する診療情報を主治医に確認

糖尿病性ドライマウス

糖尿病に関する診療情報を主治医に確認

脳血管障害性ドライマウス

リハビリに関する診療情報を主治医に確認

老人性ドライマウス

全身の健康状態を主治医などに確認

心因性ドライマウス

必要に応じて心療内科などを紹介

 

● 終わりに

現在、岡永歯科で行っているドライマウス治療がベストではないが、このくらいの治療をしないと、ドライマウスは改善しないと思う。しかし、残念なことに、医療保険制度の下では、歯科医師として満足な治療ができない状況下にある。
そこで、岡永歯科では、他に整体院を併設して、心理士(日本心理学会認定)、カイロプラクター、介護予防運動指導員(東京都老人総合研究所認定)の資格で医療類似行為として心理療法、リハビリを行うことにした。
   

 


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